技術系のネタばかり連発するとみんな飽きてくると思うので、考え方とか価値観的な話を自重しないで書いてみます。
「先に進めない時は、直感を信じて”実行”してみよう」という話。
今は、何が正解かわからない混迷の時代です。正解が複数あるかもしれませんし、そもそもないかもしれません。
自分たちの親の世代は、高度成長期の世代で、モノがないので頑張って働いて物質的な豊かさを手に入れるために苦労しました。ある意味 これは誰もが疑わない大きな目標だったわけです。モノがあれば満たされた。今はモノがあるのでそれでは答えを見い出しにくいわけです。
でも、今はモノが溢れている時代。ユニクロにいって選ぶ服に困るとか、スーパーで今晩の食事は何にしようかって迷います。おもちゃ売り場に子供を連れて行っても、贅沢をいってこれは嫌だ、あれがいいと、親を困らせる。自分の親の世代、自分たちの世代から、今を見たら、やはり物質的な豊かさは十分過ぎるぐらいの実力を持っているわけです。今は、モノなんか捨ててばかりなので、モノ以外に関心が移っています。
左脳主導思考の限界
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2006/05/08
- メディア: 単行本
- 購入: 25人 クリック: 177回
- この商品を含むブログ (297件) を見る
この本には、ビジネス・ライターのポリー・ラバールが述べた言葉が紹介されています。皮肉にもこれほど豊かになったというか、本書では過剰な豊かさと表現しています。これは左脳主導思考がこのような物質的な豊かさを創り上げてきたと説いています。
「世界の90の国々であらゆるものが買えるほどのお金を、アメリカでは、ゴミ袋のために使っている。つまり、不用品を処分するための『ゴミ箱』に、世界の約半分の国々で消費されるすべての品物にかかる費用よりも、多くの費用をかけているのである」(p.74)
その左脳主導思考はこう説明されています。プログラマはその典型ですが、現代社会は左脳主導でしょう。
これは連続的、逐語的、機能的、分析的といった、左脳に特徴的な傾向を備えたものの見方や考え方である。
「情報化時代」を支配したアプローチで、コンピュータプログラマーなどがその好例である。手堅い会社組織でもてはやされ、学校でも強調されてきたこのアプローチは、左脳の特性によって、左脳的結果を生み出すための思考である。(p.63)
簡単にいうと、左脳の理屈を処理できる能力の高さというのが、古代の都市文明から始まって、現代社会を成り立たせてきたわけです。(このあたりの話はバカの壁を読むとよくわかります)荒地でモノが運べないなら、道を作って馬で貨車を引っ張ろう。もっと短期間で効率よくとなると、道路や車が左脳力をフル活用して人類は進歩してきました。それが左脳主導思考の社会。それは全然悪いことではないし、自分たちプログラマもその力がなければ、マトモなアプリケーションは何一つ作れないわけです。でも、現状の社会の有様から、左脳だけでなんとかするのも限界だよねって話。
先に進めない時にどうしたらよいのか?
が、しかし、今の時代では、左脳主導思考だとリスクが高い選択はしたくない、という思考パターンになってしまいがち。全くの偏見で申し訳ないですが、高学歴で優秀な人ほどこのパターンに嵌っているように思います。
たとえば、PDCAって言葉があります。聞いたことあると思います。
Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する
Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする
ですよね。
最初にPlan(計画)を立てましょうと。
でも、従来の実績は使えるかどうかわかりません。将来の予測をもとにできないような時はどうしたらよいのでしょう?まさに今がそうではないかなと思います。PDCAで管理サイクルを回してカイゼンしようといっても、まず最初のPがリスクが高すぎて左脳主導思考では、実行できないわけです。
私もそういう状況に陥った時がありました。
それで、Pができない時はD(実施・実行)をやるしかないと教わったことがあります。
つまり、計画がわからない時は、実行せよ というわけです。最初は、PDCAではなくDPDCAにせよ、ということです。
計画は、左脳的に情報を整理して判断するのですが、いきなり実行となると右脳的に直感で決断するしかないわけです。勇気とか覚悟なんです。
実行すればフィードバックが得られる
その勇気と覚悟を以て、”実行”をすれば、得られるものがあります。現実の”フィードバック”です。
頭の中で考えていたより、活路が見いだせるかもしれないし、これ以上先に進むと取り返しがつかなくなる。など見えてきます。当然、やってみて個人の好き嫌いもはっきりするでしょう。このフィードバックを得て、P(計画)を行えばよいわけです。
話がアジャイルになってしまうのですが、イテレーションの最初にストーリを見積もりますが、全く未経験なストーリを実装するときは見積もりできるのでしょうか?頭で考えても答えがでません。そこで”スパイク”といって見積もりが可能になるための作業を行います。そのフィードバックを得て、見積もれば、その先が見えてきます。
だから、理屈で考えてわからない時は、決断して”実行”するしかないと思うんです。そうすれば”計画”できるようになります。
スキルアップしたいというけど、時間もないし、疲れているから本も読めないし、人付き合いも苦手だから勉強会にも出れないし、、、本当にスキルアップしたいなら、一度左脳のスイッチ切りましょう。そして右脳の自分の直感を信じて何か始めてみることです。そうすれば、その後にどうすれば、スキルアップできるかプランを立てられるようになります。そうしないと何もしないで、立ち止まったままで脳内で無限ループです。
私もいい歳(39歳)ですが、コミュニティの若い人たちと混じって勉強してます。でも、もともとは、人付き合いも苦手。妻子持ちだから時間もない。会社の仕事も忙しいです。普通に考えたら難しい。でも、動けば何か見えてきますよ。やれるやり方が。
右脳だけでもダメ、左右バランスよく!
右脳の思いつきだけで生きていくのは、難しい世の中なので、”右脳だけでもダメ”という表現は適切でないかもしれませんが、本書にはこんな一節があります。
本当にすごい人というのは、右脳からアイデアを出させて、左脳で評価することができる。
「必要条件」が右脳から出てきたら、それが「十分条件」かどうかを左脳で判断する。そこで、この両者を結ぶ「脳梁」の働きが非常に重要になる。
「右脳だけ」の人は、考えてもそれがチエックできず、自昼夢のようになってしまう。
一方、左脳もバランスよく働かせられる人は、右脳で出たアイデアを現実的なものに焼き直して、「おまえ、違うぞ」と右脳に投げかける。
すると今度はその壁を突破するようなアイデアが右脳から出て、また左脳に行き……と、右と左が相互作用を高速で繰り返すことになる。それによって、優れたアイデアが出てくるわけだ。(p.20)
前述では、左脳で考えて行き詰まったら右脳だといったのですが、右脳で直感で出てきたアイデアなどを、「なぜそれがよいのか?」と左脳の理屈で検証しなければなりません。思いつきでアイデアが出る人はこういうことができると、よりよいです。
先日社内のLTでLuaを発表した人がいて、「計算速度がとても速くてよい感じです」と説明してくれました。でも「なぜ速いんでしょうか」って質問の回答に困っていたようですが、そういう時に左脳を働かせて考えてみるとよいと思います。
ということで、難しい話をしましたが、行き詰まったら”実行”です。