かとじゅんの技術日誌

技術の話をするところ

同僚や上司、顧客から、納得を得るために必要なこと 〜演繹法〜

自分の考えを相手に納得してもらいたい場面はプライベートでも仕事でもよくある。
そういう時に使えるのがロジカルシンキングだ。日本語に訳すと、論理的に考えることだ。そのまんまw
まず、その論理とか何かという点について少し言及したい。

論理ってなに?

* (1)思考の形式・法則。議論や思考を進める道筋・論法。
* (2)認識対象の間に存在する脈絡・構造。

論理とは思考の法則、思考のつながり、推理の仕方や論証のつながりのことである。

なんか小難しいが、「考え方の規則」とか、「考え方の法則」ということかな。

論理的で何がうれしいのか?

そもそも、人間の思考はランダムだ。会議でも思いつきの発言で結論がまとまらないことがあるが、まさに人は散発的にいろんな考えが思いつく。普通にやっていては、ランダムな思考になりがちだ。
そこで思いついた自分のアイデアや主張がいかに正しいか、他人に納得してもらうための根拠が必要になってくる。そういうふうに、他人に自分の考えを表現し、納得してもらうための客観性のある思考法がロジカルシンキングだ。
ロジカルシンキングができると、無駄が省けて仕事の効率が飛躍的に向上する。ビジネスの現場では必須のスキルといってよい。ITエンジニアならなおさら。開発者が論理的でないと破滅的ITシステムが生まれてしまうからだ。

主張に対して根拠があるのが論理的な主張

現場で以下のような会話があったとする。さて、論理的な回答といえるのか?

上司:「今回の案件では、開発言語を何にすべき?」
部下:「それはもう Javaでやるべきでしょう」
顧客側:「納期に間に合いますか?」
開発側:「頑張りましたが間に合いません。もうしわけありません」

一見 何の問題もなさそうな会話だが、実は全く論理的ではない。部下や開発側の主張は、その主張を支える根拠がないからだ。
上記の例では、部下や開発会社の言い分には、主張があっても根拠がない。開発言語にJavaを採用する根拠が明かされていない。たとえば、技術者を集めやすい言語だからJavaを採用するとか。*1
そして、次のもそうだ。納期に間に合わない主張に対しても、根拠が明かされていない。不具合改修に予想以上に時間がとられたため、間に合わなかったなどと、根拠を言及すべきだ。
余談になるが、こういう論じ方は、日本に比較的多い傾向といわれている。「好きだから好きです」もそのたぐいの論じ方になる。気をつけたいところだ。
話を戻すと、論理には、考え方の規則とか法則。つまり、考え方には構造があるということなる。最終的に表現したい主張や結論に対しては、根拠が関係することになる。主張や結論が、根拠によって支えられている構造、つまりピラミッドのような構造(ピラミッドストラクチャーという)が、論理的な構造といえる。
「好きだから好きなんだよねー」や、「嫌いだから嫌いだっつーの」(同意反復という)という論じ方は、ピラミッド構造になっていない。主張が根拠、根拠が主張となっており、非論理的な表現となってしまう。これじゃ相手に納得しろというのは無理だ。
上司や同僚、顧客に対して自分の考えを主張するときは、必ず目には見えないが、ロジカルなピラミッドを頭の中に建造してから、議論したほうがいい。

実は、この論理の構造には形式があって、大きくわけて、演繹法と帰納法がある。今回は演繹法について紹介する。

演繹法とは?

演繹法は、大前提と小前提よって導かれる必然的な結論に導く方法をさす。推論の一種だ。

推論の一種。諸前提から論理の規則にしたがって必然的に結論を導き出すこと。
普通、一般的原理から特殊な原理や事実を導くことをいう。
一つの事柄から、他の事柄に意義をおしひろめて述べること。

先の例では、主張に対して根拠を関係させ、ピラミッドストラクチャーを作ると述べた。これは論理の基本ではあるが、ただ関係するだけでは論理性が低くなる。つまり、ピラミッドを作るにしても、建造の形式があるということだ。この論法を利用すれば確実に論理性が向上し、論理のピラミッドが強固なものとなる。

三段論法

演繹の代表例として、三段論法がある。聞いたことある人も多いはずだ。

大前提(大抵は普遍的な法則)と小前提(大抵は眼前の事実)から結論を導き出す推論の方法。アリストテレスによって体系化された。

例としてはこのような感じ。

大前提:「人間は、みんな死ぬ」
小前提:「部下の岩間は、人間だ」
結論:「部下の岩間は、死ぬ」

この論法によって導かれる結論は、たとえ部下の岩間さんが「人間離れ」していても、「人間である」ので「死ぬ」ということは成り立つので、「部下の岩間は、死ぬ」というのは必然的な結論となる。大前提と小前提が正しければ、何人であっても動かしようがない結論となる。この3ステップでの論理展開の仕方が三段論法の特徴だ。

ちょっと難しい話だが、三段論法では格という型がある。三段論法のスタイルと思えばいい。

三段論法の「格」 格 大前提 小前提 結論
第一格 M-P S-M S-P
第二格 P-M S-M S-P
第三格 M-P M-S S-P
第四格 P-M M-S S-P

第一格の場合は
大前提:MはPである。
小前提:SはMである。
結論:ゆえにSはPである。

であり、それを当てはめて前例をみてみると

人間(M)は、みんな死ぬ(P)。
部下の岩間(S)は、人間(M)だ。
ゆえに、部下の岩間(S)は、死ぬ(P)。

となる。

大前提:命令に背いた(M)ならば、部下ではない(P)。
小前提:岩間さん(S)は、命令に背いた(M)。
結論:ゆえに岩間さん(S)は、部下ではない(P)。

のように「〜ではない」と否定表現も可能だ。

第二格の場合は
大前提:PはMである。
小前提:SはMである。
結論:ゆえにSはPである。

であり、例えば

大前提:プロジェクトで必要不可欠なツールのひとつ(P)は、ビルドツールである(M)。
小前提:Maven2(S)は、ビルドツールである(M)。
結論:ゆえにMaven2(S)は、プロジェクトで必要不可欠なツールのひとつである(P)。

となる。

第三格の場合は
大前提:MはPである。
小前提:MはSである。
結論:ゆえにSはPである。

であり、例えば

大前提:最も現場で使われている常時結合サーバ(M)は、評価が高い(P)。
小前提:最も現場で使われている常時結合サーバ(M)は、hudson(S)である。
結論:ゆえにHudson(S)は、評価が高い(P)。

となる。

第四格の場合は
大前提:PはMである。
小前提:MはSである。
結論:ゆえにSはPである。

であり、例えば

大前提:難易度が高い技術(P)は、習得に時間がかかる技術(M)である。
小前提:習得に時間がかかる技術(M)は、DI(S)である。
結論:ゆえにDI(S)は、難易度が高い技術(P)である。

となる。

格があがるにつれ、難易度があがる。ともあれ、第一格を覚えていれば、ほとんどの場合は事足りると思われる。

風鈴ロジックはロジカルではない。

さて、問題だ。以下は論理(ロジック)として正しいか?

日本海の自然は貴重である
 ↓
我々は、日本海の自然を守らなければならない

「風鈴ロジック」とは、経営コンサルタント後正武さんの造語です。風鈴は短冊1枚で音が鳴ります。この風鈴の仕組みを論理思考に比喩的にあてはめて、1つの理由だけで物事を結論付けることを「風鈴ロジック」と呼んでいます。

この場合は三段論法で論じられていなく、前提に対していきなり結論が導かれています。こういうロジックを風鈴ロジックといい、不十分なロジック形式だ。つまり、論理が飛躍している状態だ。*2

結論に結びつけるなら、たとえば第一格の

大前提:MはPである。
小前提:SはMである。
結論:ゆえにSはPである。

に当てはめる

大前提:(自然は貴重であるため) 汚染(M)は、守らなければならない(P)。
小前提:日本海の自然(S)は、汚染されている(または、汚染が進行している)(M)。
結論:(ゆえに)日本海の自然(S)を、守らなければならない(P)。

三段論法がわかったら、新聞や電車の中吊り広告などをみて、論理的に正しいか検証してみよう。俗っぽい週刊誌とかみると訓練になると思うw
というわけで、 同僚や上司、顧客から納得を得るためのビジネスのツールとして、いろいろな現場で使えるので普及させていきたい。次のエントリでは、帰納法を紹介したい。

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補足だが、この本はプレゼンテーションの本だが、ロジカルシンキングにも触れている本で比較的読みやすい本だ。だが、書店に並んでいるのをみたことがないw amazonで購入されることをお勧めする。
考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

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*1:最初からJavaしかやらないといっても、なぜJavaを採用しているかという根拠はあるはずw

*2:私も感情的には同意するが、ビジネスの場では論理的に明確にしなければならないのだ